インタビュー

横浜F・マリノスに学ぶ スポーツをがんばる子どもと果物

スポーツをする子どもに必要な「補食」とは

スポーツをしている子どもは、していない子どもよりも多くの栄養を必要とします。1日3回の食事で必要な栄養が不足なく取れればいいのですが、例えば朝ごはんを食べていないとか、食べていてもおにぎりだけ、トーストだけなど、単品で済ませている子どもも多いようです。これでは、1日3食といっても、必要な栄養を取ることはできません。そこで、「補食」が必要となるのです。
補食はおやつとは違いますから、何でも好きなものを食べればいいというわけにはいきません。スポーツをすれば多くのエネルギーを消費しますし、汗をかくことでカルシウムなどのミネラルも失われます。そのような、運動で使ったものを素早く戻してあげる、あるいは運動をする前に蓄えておくことが補食に求められる役割なのです。

夕方からの練習前に、おすすめの捕食

果物は、糖質を多く含みますので、子どもの補食に大変適しています。なかでも、りんごに含まれるブドウ糖・果糖は、同じ糖質でもお米などに含まれるでんぷんよりも、食べてすぐにエネルギーに変わるという特長があります。ですから、例えば練習の1時間前ぐらいにりんごを食べても胃に負担がかかることはなく、30分後ぐらいにはエネルギーになるので、例えば学校から帰ってきて夕方の練習に行くような場合の補食として理想的なものの1つといえるでしょう。食べ方としては、カットしたりんごの上にヨーグルトをかけて、その上から蜂蜜をかけると、栄養バランスも良いですし、満足感も得られます。
また、りんごには水分が多く含まれているので、水分補給の役目も果たしてくれますし、りんごに含まれるクエン酸やリンゴ酸は、疲労物質の代謝を促してくれるので、疲労回復にも効果的です。

もう1つ、りんごの優れた点として、携帯のしやすさがあります。洗ったりんごを1つ持っていって、そのまま丸かじりすればいいのですから、とても簡単ですよね。それに、りんごを皮ごと食べると、ポリフェノールなどの体に良い成分を、より多く摂取することができます。
最近ではゼリー飲料が、携帯しやすいこともあって人気ですが、糖質やミネラル以外にも様々な成分を含む天然のりんごを、ゼリー飲料と同じような感覚で活用することをおすすめしたいですね。

果物についての意識が高い、横浜F・マリノスの選手たち

私が栄養アドバイスを担当している横浜F・マリノスでは、毎日、食堂にフルーツバーを用意して、選手が好きなだけ果物を食べられるようにしています。トップチームの選手の中には、ハードな練習が終わってすぐに重い食事を摂る気にはならない人もおり、最初に果物だけを前菜のように食べている姿をよく見かけます。暑い季節は、果物の上に小さく砕いた氷を乗せて一緒に食べている選手もいますよ。清涼感のある果物を食べてクールダウンしてから、栄養のある食事をしっかり摂っています。

やはり、長年トップレベルで活躍しているベテラン選手は、食事全般についての意識がものすごく高くて、甘いものが大好きな選手でも、シーズン中はケーキなどのデザートには手を付けようとはしません。その代わりに、食後に果物をたっぷり摂って、デザートとして楽しんでいます。

横浜F・マリノスには、ユース(高校生)、ジュニアユース(中学生)、プライマリー(小学生)といった育成組織がありますが、ユースの選手はトップの選手が何を食べているのかすごく気にしていて、果物を必ず食べるなどの良い点を見習おうとしています。クラブハウスの食堂では、育成組織の選手もトップとほぼ同じメニューが食べられるようになっていますし、サッカーのプレーだけでなく食事面においても、上の世代から学びやすい環境をつくっています。

子どもの頃から“しっかり食べるスキル”を磨いてほしい

スポーツをする子どもたちにおすすめしたい食事のルールを、私なりにまとめたものがありますので、ご紹介しましょう。この「強い身体と心をつくるための7つのルール」においても、果物をとても重要なものとして位置づけています。⑤に「果物を毎日食べる」とありますが、①、⑥、⑦においても果物が深く関係していますから、果物を毎日食べる習慣を身に付けられたら、ジュニアアスリートとして理想的な食事にぐっと近づくことができます。

ただ、食事管理はお母さんの役目と考えてしまうと、忙しい毎日の中では、なかなか難しい面もあるでしょうから、家族全員で意識をして、協力しあうことが大切です。
例えば、夕方からの練習前、コンビニで補食を買う時に何を選べばいいのか、子どもが自分で判断できるようにしてあげることも必要でしょう。脂っこいカレーパンよりもあんぱんが、高脂肪なケーキやハンバーガーよりもおにぎりや肉まんが適しているのですが、すぐに実践できる情報を教えてあげれば、子どもたちは素直に受け入れるものです。最近では果物もコンビニで売っていますから、りんごやバナナも選択肢に入れられますね。

また、食欲のない時や体調の悪い時にも、果物をうまく活用することで、必要な栄養を取ってもらいたいと思います。食欲のない時は、のど越しのよいものが一番ですから、果物たっぷりのスムージーなどがおすすめですし、熱がある時は、栄養価の高いアイスクリームと果物の組み合わせもいいでしょう。
「食べることもトレーニング」という言葉を耳にしますが、本当にその通りで、遠征などで環境が変わった時でもしっかり食べなくては、コンディションを保つことができません。それには、普段からの食べる練習が必要で、嫌いなものは一口でもいいから食べるなど、意識して取り組んでもらいたいと思います。高校生ぐらいまでに、その日の練習量に合わせて食べるものを自分で調整できるようになれたら理想的ですね。

橋本玲子(公認スポーツ栄養士)

株式会社Food Connection 代表取締役。幼少から両親の仕事の関係で、シンガポール、ノルウェー、アメリカなどで12年間を過ごし帰国後、管理栄養士の資格を取得する。
2000年に、栄養コンサルティング会社を設立。欧米の健康と栄養に関する情報の収集、普及に務めている。現在は、プロサッカーチームや社会人ラグビーチームの栄養アドバイザーを務める傍ら、食品企業・団体向けのメニュー提案や栄養教育ツールの監修、講演活動など、幅広い活動を行っている。

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